2010年04月19日

小川彌生「きみはペット」

きみはペット(1) (KC KISS)

きみはペット(1) (KC KISS)

  • 作者: 小川 彌生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/12/13
  • メディア: コミック


2003年にドラマ化された小川 彌生の人気コミック「きみはペット」。
ヒロインは東大卒のキャリアウーマン。
連載当初は読者からの支持を得られるかどうか未知数だったそうです。
働く女性の共感を生んだ「きみペ」は新しい男女関係の象徴かもしれません。

主人公は(努力して)クールビューティ(になった)巌谷澄麗(イワヤ スミレ)。
ひょんないきさつからペットとして同居をはじめたモモ(合田武志)。
同じ新聞社に勤める3高の蓮實(ハスミ)先輩との奇妙な三角関係。

スミレは憧れの蓮實先輩の前で本音が言えない。
些細なことでも口に出せない。
モモの前ではプロレス技をかけたり、言いたい放題でも楽しく過ごせているのに。


これが恋愛の落とし穴。
蓮實先輩から男らしくリードされると、クールビューティのスミレはしおらしくなります。
男性のように働くスミレにとって、自分が女であることを意識させてくれる相手はいろんな意味で刺激的。
そんなふうに、異性を意識する関係でセックスが成立します。
モモとはじゃれあってばかりで、なかなか男女の関係に発展しません。

誰もが羨む完璧な彼氏・蓮實先輩の前では、スミレの女センサー≠ェ過剰に反応。
好きなのに疲れてしまう。
非の打ち所がない相手の前では、恋愛しても仕事モードが抜けないのです。
隙がなくて遊びがない関係は苦痛が伴い、つきあうことが義務感になってくるのかもしれません。

ドキドキとワクワクが恋愛なのに、義務感がつきまとったら仕事と同じ。
緊張感ばかりで楽しくありません。
ミスが許されない仕事のように、蓮實先輩の前で完璧な女を演じてしまうんでしょうね。
無難にソツなくやりすごしてしまうのです。
蓮實先輩に用意するのはレシピどおりの鯛茶漬けですが、モモに作るオムライスにはタコさんウィンナー。
無難にソツなく≠ナはなく、自然に手間隙かけてます。
女というより母性本能。
それこそモモが求めていたものでした。

4人姉妹の末っ子に生まれたモモは、女性の扱い方に慣れています。
浮気する夫を見返すために、母親から成功することを強要されたモモ。
どんなに頑張っても修復できない夫婦関係。
どんなにモテても干渉してくる彼女にウンザリ。
その点スミレは冷たいくらい干渉しません。
厳格な家庭に生まれたスミレもまた、安らぎを知らずに育っています。
お互いにはじめてのアットホームを共有しながら、無二の存在を意識していく過程が見どころ。


ドラマのモモ役は松本潤でいいとして、小雪のスミレ役は愛嬌ありすぎ。
長身のクールビューティといえば川原亜矢子かなぁ。
大人すぎてキャスティングはキビシイか。
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2010年03月27日

紫門ふみ「はんなり!」

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ビッグコミック「スペリール」連載中の紫門ふみ「はんなり!」から。

骨董屋の息子・歳多修治は目利きの天才であり、写し(贋作)の天才でもある。
その修治にコレクターの村崎兵衛が禅問答で問いかける。
兵衛の孫に古九谷を見せても猫に小判。
けれど目利きの修治に見せれば、その価値はいわずもがな。

「さて修治君、『美』は今どこにある?」
古九谷を指差す修治

「おかしいですね。
この皿にあるとしたら、さっきウチの孫はどうして『美』に気づかなかった?」
そういって古久谷をしまう兵衛

「ここには『美』はない。『美』はここにある。」修治の胸を指す。

「『美』は人間の心だ。
 きれいなものをきれいと思う、人の心だ。」


古小谷が美しいのではなく、それを美しいと思う人の心に『美』が宿る。
そこまでが前号までのあらすじ。
今週号では、金にも女にもだらしない破滅型の修治に、「美」とは何かを呼び覚まします。

「とっさの行動に人としての美しさが現われるんです。」
そしてその美しさは、人を愛する気持ちから生まれると説きます。
才能を持て余すろくでなしの修治ですが、とっさにみせる深い愛情に、女たちは情緒を感じ取り、『美』を見いだすのでしょう。

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2010年02月12日

山岸凉子「天人唐草」より(※ネタバレあり)


天人唐草―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)

天人唐草―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)

  • 作者: 山岸 凉子
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 1994/03
  • メディア: 文庫




山岸凉子の長編代表作といえば「アラベスク」「日出処の天子」。
聖徳太子が主人公の「日出処〜」は友達から無理やり薦められ、結局読まなかったのですが、この「天人唐草」は短編なのに読み応えがありました。
今なら山岸凉子の世界にハマることができそうです。

まず、「天人唐草」が30年前の少女マンガということに驚きました。
1979年からこうした問題に焦点をあてていたなんて、。
今でも十分通用します。
「東電OL殺人事件の被害者の背景と酷似してる」という噂から読んでみたのですが、こういう育て方をされた女性は何かのはずみでブッとんでしまいますよ。
尊敬していた父親が“子どもを産むための女”と“セックスするための女”を使い分けていたのだから。

厳格な父親によって自由な発言を規制され、自らの意志で生きることを許されなかった響子。
どんどんつまらない女になってしまい、会社では萎縮してばかり。
憧れていた男性は、(響子の父親が嫌うタイプの)派手な女性とサッサと職場結婚。
適齢期を迎えた響子はお見合いをしても断られ、女性的な魅力は抑圧されたまま。
両親のもとしか居場所がなかったのに、二人共鬼籍に入ってしまったらもう彼女は生きていく術がない。
最後に知った父親の裏切りが、彼女を支えていた信条を根こそぎ奪っていきます。

私の高校時代は・・・

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春先の校庭で野花を摘んだら、生物部の友達が「それはイヌフグリだよ」と教えてくれた。
「イヌフグリ?」とつぶやくと、ヘヴィメタ好きのSさんがニヤニヤしながら教えてくれた。
「フグリっていうのはね、○玉っていう意味なんですよ」
Sさんはよく言ってた。
「好きな人とセックスしてエクスタシーに達してみたいっ!!」
その時は半分あきれて笑ってしまったけど、そんな会話のできる友達がいてよかったのかもしれない。
響子のようにタブー視されたら、私は性を否定していたかもしれない。


私の中学時代の友達も、厳しい母親からいろんなことを禁止されていました。
クラブ活動はダメ、友達の家に遊びに行ってもダメ、勉強して看護師なりなさい、収入がいいから・・・と常にプレッシャーをかけられ、イザという時に実力を発揮できないところがありました。

だけど私は彼女が大好きで、グループではいつも中心になって笑いを取るのにハメをはずさない人。
ちゃんと宿題はしてくるし、体育で腹筋ができなかったら家で練習してくるような娘でした。
そんな彼女をみて、私も厳しい体育の授業についていこうと思いました。

面白いことを言って中心人物になる女子なら他にもいたけど、躾けられた真面目さと本来のユーモアを両方出せていたから彼女はよかったのだと思います。
二つ年上の先輩から熱愛され、高校を卒業するとすぐ結婚していました。
その友達は魅力的な人だったから、早く親元から離れて正解だったと思います。

親の世代の価値観はどんどん古くなっていき、現代で通じるものもあればふさわしくないものもあります。
それを取捨選択できるのは今を生きている人たち。
自分を生きてる人たちです。
借り物の檻の中から出られず、窮屈な思いをしてる響子は今もどこかでさまよっています。

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2010年01月31日

町工場の星、岡野雅行さん


学校の勉強だけではメシは食えない!―世界一の職人が教える「世渡り力」「仕事」「成功」の発想

学校の勉強だけではメシは食えない!―世界一の職人が教える「世渡り力」「仕事」「成功」の発想

  • 作者: 岡野 雅行
  • 出版社/メーカー: こう書房
  • 発売日: 2007/11/10
  • メディア: 単行本




学校の勉強ができなくても手に職があって世渡り上手な人に憧れます。
天変地異が起きたら、学歴とか資格とか、何の意味もないですからね。
何があっても生きていける強さって一生モノだと思います。

亀有発の浅草行きのバスは墨田区を通過するのですが、途中でテルモの会社がみえてきます。
そのたび著者の岡野さんを身近に感じることができます。

墨田区で町工場を営む岡野雅行さんは、テルモの「痛くない注射針」を開発したことで有名。
毎日インスリン注射を打つ糖尿病患者にとってこれは画期的な発明でした。
岡野さんはこのように“誰もやらないようなモノづくり”を得意とします。
「技術の駆け込み寺」と呼ばれるこの町工場には、アメリカのNASAが依頼を申し込むほど。

一発屋の演歌歌手のように、技術で一度当てればそれで一生食べていこうとするものですが、岡野さんはそうしません。
常に先駆者です。
他の業者が真似しはじめたら、とっとと次の開発にのりだします。
廃れる前に新しいモノづくりに着手するんですね。
常に追いかける姿勢は、遊び感覚でないと続けられないと思います。
それでいて会社を大きくせず、町工場として名を上げようとする心意気が粋。

「外国で一人旅したい」という娘さんには、「イエス・ノーがはっきり言えるようになれる」といって賛成する度量の広さ。
娘のバックパッカーを認める父親ってそういませんよ。
「危険でもためになる」という強い信念があるからOKできるんでしょうね。
もし岡野さんが普通の大卒だったら箱入り娘になっていたと思います。
“小卒でも俺は通用できる”という自信と、肌で感じた世間の冷たさを知ってるからこそ娘さんの背中を押すことができたのではないでしょうか。
むやみに賛成するのでなく、ホテルだけは一流どころに指定するところが親心ですね。

そんな岡野さんが選ぶ社員旅行は発展途上国。
遊ぶだけでなく、そこで懸命に働く人たちを見て奮起させるため。
岡野さん自身が発展途上国でそう感じたから社員にもすすめているのだと思います。
「ただ楽しむだけの社員旅行なんて意味がないよ。そこから自分たちなりに何かを感じてこないと。」
といわれるように、緩める部分と引き締める部分のバランス感覚が抜群。
相当アクの強い人だろうけど、ここまで達観してたら天晴れ。

「最先端のものばかり追いかけてると基本的なものが作れなくなる」とか、
「いくら会社を大きくしても人は一度しか生きられない。それなら俺は自分の目の届く範囲で自分のために生きたい」とか、下町ならではの発想が嬉しくなります。
6人しかいない町工場で精鋭の仕事をこなしながら「明日は東京湾で釣りでもしにいこうか」といえることが、岡野さんにとって“自分のために生きること”。
人間らしい息抜きができるから、いいアイデアが思いつくのかもしれません。

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2010年01月24日

ある事件から・・・中島みゆき「エレーン」

あなたが体験した怖い話 2010年 03月号 [雑誌]

あなたが体験した怖い話 2010年 03月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ぶんか社
  • 発売日: 2010/01/23
  • メディア: 雑誌




わざわざこんなモノ読んで怖がってる私ですが。
この雑誌でおもしろいのは霊能者・稲葉朋子さんのお話です。

ホラー漫画の巨匠・永久保貴一先生の作品では、一般的な女性として描かれていた稲葉朋子さん。
漫画家が変わったせいか編集部の方針のせいか、今はオシャレで美人な霊能者として描かれています。

今月号で紹介されていた浮遊霊は、あの有名な事件の被害者。
特定されるといろいろ問題があるせいか、かなり脚色されていました。
ネットで調べてみたところ、被害者が生前出没していた場所には、今も花をたむける訪問者が後を絶たないそうです。

今も成仏していない霊のエピソードに同調してはいけないのだけれど、世のバリキャリ(バリバリ働くキャリアウーマン)方にはどこか通じるものがあるのではないでしょうか。
稲葉さんの言葉から、被害者の孤独な人生が感じられます。

「彼女の人生は 自分の欲望と 親の希望との間での 葛藤だった」

父親から“仕事ができる人間こそ偉いのだ”と刷り込まれ、そのとおりに生きてきたけど、仕事のできない女性から結婚していく。
価値観を変えて“ 人を愛せる人間 ”になろうと努力したけど、「私」は誰からも愛されない。

そして彼女は愛される居場所を作った。
そこはホテル街だった。
その時だけは男が必死に女を欲しがることを知ってしまった。
最後はゆきずりの男に命を奪われてしまう。


センセーショナルな事件だったからいろんな作家が本にしているけれど、彼女の孤独は氷山の一角。
今なら「婚活」という言葉でノウハウが語れる時代。
当時のキャリアウーマンは、真面目に働いて気がついたら30代。
悠々自適におひとりさまではいられなかったのでしょう。


私も似たような孤独感を知っています。
仕事でどんなに好かれても限度があるし、プライベートでどんなに一人を楽しんでも一人分の喜び。

「話し方」の本には、
「話し上手になれば人から好かれるようになれます」
「信頼されます」と書いてあるけど、
私はもう好かれたくありませんでした。
信頼されたくもなかった。
仕事の時じゃない、素の私で好かれたかったです。
私が必要としてる人に。
その望みが実現できなかったら、あの被害者みたいに居場所がなくて苦しい思いをしたはず。

あの事件から「女には堕ちてしまいたい願望がある」と説いた人がいますが、そういうことじゃないと思います。
バリキャリは考え方が男性的になってしまうから、男性が風俗で肌のぬくもりを求めるように、被害者も同じことをしていただけ。
世間で評価される肩書きがたくさんあるのに、満たされなくて、人肌求めてさまよっていただけ。



みんなたぶん一晩で 忘れたいと思うような悪い噂
どこにも おまえを知っていたと口に出せない奴らが流す悪口


流れてくる噂は みんな本当のことかもしれない
おまえはたちの悪い女で 死んだいって良かった奴かもしれない
 
けれどどんな噂より
けれどおまえのどんなつくり笑いより、私は
笑わずにいられない淋しさだけは本当だったと思う

posted by 亀有夕子 at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | レビュー(本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする